きび美随想

館長 臼井洋輔

熱血を注ぐ「きび美」の文化講座

 私は四十数年という長い間、実物の文化財と一時も離れることはなく、しかも岡山の、吉備の文化の超一級品と対話し続けてきました。それは何にも代えがたい学校教育以後の自己形成上の貴重な体験教育でありました。何せ「吉備」は日本の中で、最も先進性と柔軟性と「グローカル」な、これからの日本が必要とする哲学を持っているのですから。


副館長 魚住和晃

書鑑賞の楽しみ

書はわからない、書の鑑賞は難しいという声をよく耳にします。その原因の一つに、書とは美しい筆跡をさす語であるとの思い込みがなされていることがあるようです。もちろん、美しく妙味が発揮された書は少なくありませんが、それとは逆に、美しさや妙味を押し殺した書も少なくないのです。そして、前者は鑑賞しやすいのに対し、後者はつかみどころがわからず、鑑賞が難しいということになります。

美しさの要素として始めに挙げられるのは、碁盤の目のように整然として付された配置です。これは一画一画の配置であり、字形の整いであり、一字一字の位置どりによって成ります。